我が家の夏休みと、障害児の「預かりの隙間」問題

夏休みが終わりました。長い休みの間、いつもと違う生活リズムで過ごしていた子どもたち。
親御さんにとっては、安心できる居場所や時間の工夫が欠かせない日々だったことでしょう。

今日は、私のこの夏の体験から、改めて障害児の「預かり問題」について考えてみました。

我が家の夏休みと「ジェットコースター」のような日々

我が家の怒涛の夏休みも、ようやく終わりました。
この夏休みを一言で表すなら、まさに 「ジェットコースター」 です。

頂点に達したときの素晴らしい気持ちは、お盆の旅行先である神奈川(藤沢、江ノ島、鎌倉、横浜)で味わいました。
そして、真っ逆さまに心が落ちる恐怖も、福祉サービスの不足により経験しました。

でも、新学期が始まって余裕のできた今、こうして振り返ってみると、二度と戻ってこない、かけがえのない夏休みだったと心から思います。

なぜお盆に旅行したのか

もともとこの夏は旅行に行く予定はありませんでした。
しかし、8月12日、放課後等デイサービスがお休みで自宅にいる娘をみながら家事や仕事をし続けることに、激しい限界を感じました。

例えば、私がパソコンに集中して娘に生返事をしてしまうと、娘は私の気を引きたくて、行動がエスカレートします。※娘はいわゆる「強度行動障害児」です。

  • リビングの中にある非常警報ボタンを押して、近所に大きい警報音が鳴り響く
  • 寝室に置いてあった私の老眼鏡を真っ二つに折る(置いた私が悪いですが、、)
  • 私がトイレなどで目を離した隙に玄関から出て、マイカーのドアにわざと傷をつける

もういっそのこと、子どもの真正面から向き合うために、放デイお休みのお盆期間中は一切仕事をしない環境に身を置くしかないと判断しました。

そこで、直前に楽天トラベルで宿を予約し、神奈川へ旅行に行くことになりました。
(人気旅行先は、宿の激戦区でもあるので、直前キャンセルで意外と安く宿が出ていることがあるそうです。)

「今ここ」に全集中した旅行

よく自閉症の子は 「今を生きる」傾向がありますが、私もこの旅行中は、過去や将来のことを一切忘れ、”今ここ”に全集中しました。

その結果、かえって ストレス発散 になり、神仏にお参りして 心身が浄化され、思わぬ効果があったので、思い切って出かけて良かったと感じています。

今思えば、江島神社や鶴岡八幡宮の神様が
「そんなに思い詰めることないじゃない?さあ肩の力を抜いて、みんなでいらっしゃい!」と手招きしてくれたように思います。

障害児の「預かりの隙間」の現実

障害のある子どもたち、特に強度行動障害児を含む子どもたちにとって、預かりの隙間はまだまだ大きいという現実があります。

日本の制度上、預かりサービスには大きな「空白地帯」があります。

  • 就学前:保育園・認定こども園・地域型保育など、公的に整備されています
  • 小1〜小3ごろ:放課後児童クラブ(学童保育)が中心。ただし障害児の受け入れは地域や事業所により差があります
  • 小4以上の障害児:学童クラブは基本的に「小3まで」を対象としており、受け皿が非常に限られています

頼みの綱の放課後等デイサービス

そこで、代替的に利用されるのが 放課後等デイサービス(放デイ) です。
しかし放デイは「療育目的」で設けられており、必ずしも「預かりニーズ」には十分対応できません。
さらに厚生労働省が「放デイの適正化」を進めているため、純粋な預かり的運営は難しくなっています。

そのため現状では、小4以上で障害がある子どもは 放デイを使っている状況です。※日中一時もあります。
しかし療育型サービスなので、「預かり的に使いたい家庭」と「療育を求める家庭」でニーズが乖離し、結果として

  • 「預け先がない」
  • 「親の就労継続が困難」

という問題が起きています。

この空白をどう埋めるかは、障害福祉や子育て支援の大きな課題です。
自治体によっては「放課後子ども教室」や「地域の居場所」で補完している所もありますが、安定した仕組みとは言えません。

頼みの綱の放課後等デイサービスでも、、、

さらに夏休みは、短縮営業の放デイが多く

  • 9時半〜15時半
  • 10時〜16時

という事業所が多いです。お盆休みや年末年始には 1週間近くお休み になる場合もあり、親御さんが仕事を休まざるを得ない状況もあります。

このように、障害児の預かりは「幼児期」「学童期」「学童卒業後」の間で隙間が生じ、家庭の負担は非常に大きくなっています。

働かないと食べていけないのに、そもそも働く環境と時間が非常に限られている。
この矛盾に、心が張り裂けそうになります。
子どもにじっくり向き合いたいのに、子どもを脇で待たせながら、イライラしつつ仕事をしている現実。ほんとうに涙が出ます。

放課後等デイサービスに預けられない子供もいる

加えて、強度行動障害があると、人員の都合で利用を断られたり、短時間利用をすすめられたりもします。

なぜ「預かりの隙間」ができているのか

制度を俯瞰してみると、確かに 「就学前」や「低学年」までは国・自治体が公的に預かりサービスを保障 しているのに、小4以上の障害児の放課後保障は家族の責任に押し戻されている 状態です。

これは以下のような理由が絡んでいます:

制度の縦割り

  • 保育は「子ども・子育て支援新制度」(内閣府・厚労省管轄)
  • 学童は「子ども家庭庁(旧厚労省)」
  • 学校教育は「文科省」
  • 放課後等デイサービスは「障害福祉」(厚労省)

★それぞれの制度が「自分の所管の子ども」だけを対象にしているため、横断的に見たときに 小学4年以降の障害児が抜け落ちる のです。

政策の優先順位

  • 国はまず「就学前の子育て支援」「共働き世帯の低学年児童の預かり」に予算を重点化してきました。
  • 高学年や障害児の「預かりニーズ」は後回しになってきた歴史があります。

福祉制度の考え方

  • 障害福祉は「本人の発達支援」「社会参加の促進」が主眼
  • 「親の就労支援」「生活の預かり保障」は制度の主目的ではありません。←令和6年の報酬改定で、預かりニーズに対応する仕組みはできました。

★その結果、「放課後等デイサービスを預かり目的で使う」ことがグレーゾーン になり、現場で混乱しているのです。

ヘルパーサービスの可能性

そこで私が注目しているのが、ヘルパーサービスの活用です。

  • 子どもの生活に合わせて 個別にサポート が提供できる
  • 学童期以降でも 安心して預けられる
  • 保護者の勤務時間や家庭の状況に合わせて 柔軟な支援 が可能
  • マンツーマンや2人介護の仕組み を活用すれば、強度行動障害児にも個別の安全・安心なサポートが可能
  • 地域生活支援事業「移動支援」 を利用すれば、保護者のレスパイトを目的として、一緒にお出かけ なども可能

居宅介護は基本的に障害者の方を対象としたサービスですが、状況によっては障害児も利用できます。

私のよろこび

私は最近、居宅介護事業者の立ち上げをサポートしました。
こうして、地域で困っている親子をサポートできる仕組みを少しずつ整えていく取り組みに参加できることを、とてもうれしく思います。

障害児の「預かりの隙間」を少しでも埋め、家庭の負担を軽減するために、ヘルパーサービスは有効な選択肢のひとつです。
今後も制度やサービスの活用を通じて、安心して子どもたちを預けられる環境づくりが必要だと考えています。

居宅介護の経営について

ただし、居宅介護事業を運営する上では、経営面の厳しさもあります。

  • 報酬単価の制約:介護報酬によって収入が決まるため、人件費や交通費の増加が利益を圧迫する場合があります。
  • 人材確保の難しさ:マンツーマンのサービス提供が基本で、経験者不足や離職率の高さで人件費や研修コストが増大します。
  • 利用者確保の課題:安定した利用者が確保できるまで収益が不安定になる場合があります。
  • 記録・報告業務の負担:ケア記録や請求業務など事務作業の負担も無視できません。

収益改善のポイント

  • 複数サービスとの併設(移動支援・生活介護・放デイなど)で収益源を多角化
  • 人材の確保・定着策(研修・待遇改善・働きやすい環境作り)
  • ニーズの高い分野への特化(強度行動障害児や重度障害者のマンツーマンサポートなど)
  • 効率的なスケジューリング・ICT活用で移動時間や記録作業を削減

このように、居宅介護の経営は厳しい部分もありますが、工夫や専門性の追求で安定化・収益改善は可能です。
地域で困っている親子を支えながら、事業としても持続可能に運営していくことが重要です。

おわりに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事が少しでも、障害児の預かりや支援について考えるきっかけや参考になれば幸いです。

投稿者プロフィール

武藤久美子/ 行政書士にじのわオフィス代表
武藤久美子/ 行政書士にじのわオフィス代表
障がいのある方やご家族が、制度の壁に悩まず、
必要な支援をきちんと受けられるように。
そして、現場で支える障害福祉事業者の方々が、
制度の運用や加算対応に悩まず、安心して本来の支援に専念できるように
行政書士として、制度理解・書類作成・運営体制整備まで丁寧にサポートしています。
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専門用語を使わず、やさしく丁寧にご説明します。

ー障害・児童福祉サポート行政書士 武藤久美子ー